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 地域の人をゆるやかにつなげることを目指し、100人のゲストが登壇する「100人カイギ」が全国に広がっている。2016年に東京都港区で始まったカイギは開催地域が100を超え、参加者は延べ5万人に達した。日本の大きな課題である地方活性化の芽となり始めている。

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我孫子市100人カイギで発表に耳を傾ける参加者たち=2024年9月28日、千葉県我孫子市、八鍬耕造撮影

 「地元のラグビーチームで、社員選手として地域、企業とチームをつなぐ活動もやっています」。昨年9月28日、千葉県我孫子市。イトーヨーカドーのホールで「第20回我孫子市100人カイギ」が開かれていた。

 土曜日の午後の開催で、79人が参加。美容室やサウナを経営する男性や不動産会社の若手女性社員、ラグビー選手らの話に耳を傾けていた。全体で2時間、ゲストの各10分間の発表の前後には、「アイスブレイク」「ネットワーキング」と呼ぶゲストを含めた参加者同士の名刺交換の時間が設けられ、あちこちで会話の花が咲いていた。

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我孫子市100人カイギの最終回。初対面の参加者が交流するのは、100人カイギの特徴の一つだ=2024年9月28日、千葉県我孫子市、八鍬耕造撮影

 第3回のゲストとして登壇した市民活動グループリーダーの片岡綾さんは「一市民がまちの思いを語れる。ここに来るとまた新しい人と話すことになり、ドキドキするけど楽しい」と話した。運営に携わった、市内にある中央学院大学法学部4年の加藤恵菜さんは「100人カイギに参加して人生が変わった。地域愛に目覚め、価値観が変わった」と振り返る。

 100人カイギを始めたのは、会社員の高嶋大介さん(51)。もともと、人の話を聞くのが好きで、憧れていた人に声をかけて、昼食をとるようにしていた。「こんなに価値のある話を、自分だけが聞くのはもったいない」と思うようになり、100人カイギを思いついた。

 カイギは「うめだ」「茅ケ崎」といった地域や、「看護師」「自転車」などテーマごとに設定。各回5人のゲストを招き、20回開いたら解散することにした。

 SNSなどを通じてじわじわと共感する人が増え、カイギは続々と立ち上がった。街の活性化につながったケースも少なくないという。東京都渋谷区のカイギでは19年11月に解散後、運営に関わったメンバーが地元の書店と、飲食店やホテルに本を置く協働のプロジェクトを立ち上げた。我孫子市も、ゲストを中心に解散後も交流を続けていくことを考えている。カイギの参加者がゲストの飲食店を回るツアーを行った例もあるという。

 「見届け人」として運営を支える高嶋さんは「デジタルが進む現代社会で、リアルなコミュニケーションの重要性、対面での交流や共有体験の価値が高まっているのではないか」とみる。

 高嶋さんにとって予想外だっ…

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